先日、FM福岡のモーニングジャムの人気コーナー「おもろい家族」に、満を持して学生時代のエピソードを投稿したけど、残念ながら番組で読まれた形跡はなく、、、(その時間は仕事中のため不明)。
家族のことではなくて自分自身の話だったからなのか、文章が長すぎたのか、そもそも面白くなかったからなのか、分からないけど、せっかく思い出しながら書いた文章なので、このぶろぐでも紹介します。
◇ ◇ ◇ ◇ ◇
20年以上前、卒業旅行で友人3人(計4人)とイタリアに行った時の話。行きの空の上で、前代未聞の一悶着がありました。
全員サッカー部だったので、目的は当然サッカー観戦。本場イタリアでサッカーが観られれば、それだけで良いので、宿や食事、もちろん飛行機も格安にして、身軽に動けるようにと荷物も最小限にバックパックひとつだけ。
季節は冬。もっとも格安だった、成田発ロンドン経由ローマ行きの、ブリティッシュエアウェイズに乗りました。
前年にフランスW杯の観戦ツアーを経験していた私にとって、この卒業旅行は海外2回目。一方、友人3人(全員男性)はこれが初めての海外。ただ、あっちこっち行くことになるので、バックパックひとつで、と約束したにも関わらず、3人とも、どデカいスーツケースに荷物をたくさん詰め込んで来やがりました。
そんなに荷物が多かった、身軽に動けんやろ、と集合した空港で会った瞬間に、軽くイラ立ってしまいました。案の定、現地ではスタジアムに行くのに、3人とも、大きなスーツケースをガラガラさせながら、入り口ではセキュリティにより長時間、拘束されたりする始末。。。
それはさておき、友人3人は、当然ながら国際線に乗るのも初。しかも、客室乗務員(CA)は金髪で長身の英国美女ばかり。成田を出発したそばから、友人たちはキョロキョロ、ソワソワ。金髪美女のCAから目が離せない様子。
当時は、機内でのカップラーメンなどの軽食や飲み物は無料(今も?)で、食べ放題、飲み放題だった時代。
私は友人3人に、CAの呼び出し方(手元の呼び出しボタン)や呼び止め方(「エクスキューズミー」)、注文の仕方(「○○プリーズ」)、メニューの名前(コーラは「クァーク」、珈琲は「カッフィー」、カップヌードルは「インスタントヌードォー」等)など一通りレクチャーしました。
すると、早速、友人の1人が「インスタントヌードォー」を注文。やってきたのは、とても若くてダイナマイトなCAでした。どうやら、新人っぽい彼女が、私たちの座っているエリアを担当しているようでした。
調子に乗った友人たちは、その新人CAを呼び出したいがために、機内食の時間を除いて、30分に1回くらいのペースで何かを注文。私の隣の通路側に座る、もっとも“調子こきまろ”の友人は、彼女が通路を通るたびに、顔を通路に出して覗きまくり。初めての国際線と金髪美女にテンションマックス状態、ここは多めに見てました。
そんな高頻度な呼び出しにも関わらず、新人CAは嫌な顔ひとつせず、むしろ、交流が増えたことで、徐々に笑顔も増え、私達のグループと仲良くなっていきました。
事件が起きたのは、航行が半分くらい過ぎ、多くの乗客が眠りに付こうとしたときでした。
周りは静かになってきているのに、隣に座る友人は調子にのったまま。相変わらず、「カッフィー」⇒「カッフィー」⇒「ウヮラー(水)」⇒「インスタントヌードォー」のサイクルで注文を繰り返しています。
静まりかえった周りの状況もお構いなしに、友人は、また呼び出しボタンを押し、新人CAを呼び出すと、「カッフィー、プリーズ!」と満面の笑み。
この時、ちょうど私も喉が渇いていたので、私の分も一つ、カッフィーを追加してもらう事に。そのとき、チラッと覗きこんだ新人CAの顔は、やや疲れているのか、さえない表情でした。
呼び出されたのは、これで10回目くらいだったと思います。
間もなくして、トレーにカッフィー2つを載せてやってきた新人CA。やっぱり疲れた様子。
先に、通路側の友人に片手でトレーを差し出すと、友人は「サ~ンキュゥ~ゥ!」と言いながらカッフィーカップを1つ手に取りました。
次の瞬間、「熱っぢっ!」。声をあげたのは私でした。
友人がカッフィーカップを取ったことで、トレーのバランスが崩れて、もう一つの私のカッフィーカップが奥に座っていた私の方に倒れて、中に入っていた熱々のカッフィーが私の股間から太ももにかけてこぼれたのでした。
その瞬間、彼女は口に手をあて何か独り言を小さく呟きました(たぶん「オーマイガッ」)。そして「ソーリー、、、」と小さく発すると、足早にバックヤードに向かいました。
熱い、とにかく熱い。数十秒で熱さは我慢出来るほどに和らいだものの、カッフィーは太ももを伝って、お尻の方にも侵入している様子。
すぐに彼女は、バックヤードから何かを持って戻ってきました。
手に持っていたのは、おしぼり2つ。居酒屋とかでもらうような、袋に入ったおしぼりです。
戻ってきた彼女は、持っていた2つのおしぼりを、いきなり奥に座る私の股間のあたりにポイッって投げると、踵を返してバックヤードに消えて行きました。
え!? いま投げたよね? 袋に入ったままで投げたよね。
隣の友人と顔を見合わせると、「うん、投げた。普通、袋から出して渡すけどね」と言いながらもゲラゲラ笑う友人。日本人に比べると外国人は雑なところがあると聞いていたので、正直、投げたことについてはそこまで問題視しませんでした。
友人も「(おしぼりは)応急措置だから、あとでちゃんと何とかしてくれるって」と言うので、待っていました。
友人3人とは異なり、私はバックパックひとつ。旅行に持ってきた着替えは、下着と靴下のみ。ズボンは履いているジーンズ1着のみ。これを脱いだところで、履き替えるものがない。
再び、新人CAが戻ってくるまでの間、腰を浮かせたり、ジーンズと太ももの間に空間を作ってパタパタさせたりして、凌いでいました。
しかーし、、、
1分経っても、3分経っても、10分経っても、まだ来ません。20分くらい経ったでしょうか、やっぱり来ませんでした。
ひょっとして、さっきのおしぼり2つで終わり? この、カッフィーまみれの私(の股間あたり)は、このまま放置? 20分も経つとすでに熱さはないけど、湿ったままなのは変わらず。この状態で寝ろと言われても、絶対に寝れない! 完全におねしょ状態やし。
いろいろ、考えていたら、だんだんと怒りがこみ上げてきました。いったい何なんだ、この放置プレー(怒)
でも英語で会話できる自信もないので、反対側の通路を担当していた日本人の客室乗務員を見つけ、友人に呼んできてもらいました。
30代くらいの、そこそこ経験を積まれたと思われる日本人CAに、事の顛末を説明して、現在もジーンズとその下に履いているパンツ、そして座っている座席が濡れた状態であることを伝えると、日本人CAは「まっ!」と驚き、顔を紅潮させ、眼を見開き、とてつもない怒りの、鬼の表情に変わり、「も、申し訳ございません。。。か、彼女を、呼んできます!」と言って、彼女のいるバックヤードへ急ぎました。
本当は新人CAを連れてきて欲しいのではなく、このおねしょ状態を何とかして欲しいんですが、、、。
すぐに連れてくるかと思ったら、これが、なかなか戻ってきません。
ただ、バックヤードの中で、2人のCAが英語で言い争っている様子が、なんとなく聞こえてきます。英語なので何を言っているのか分からないけど、おそらく日本人CAが連れ戻して謝らせようとしたいのに、新人CAは、何やら言い訳をしている様子。
たぶん5分以上は言い争っていたと思います。
ようやく、言い争いが終わると、バックヤードから出て来たのは、日本人CAだけ。浮かない表情で戻ってきた日本人CAは、頭を下げながら、「本当に申し訳ございません。実は彼女、、、『私は悪くない!』と言って聞かないんです、、、」と平謝り。
そこで、聞いてみました。「私は悪くない」ってどういう事ですか? すると、日本人CAは言いにくそうに、「彼女が言うには、、、隣の友人が、、、こぼした、と言っているんです、、、」
えぇぇーーーーっ!!!(友人)
それを聞いて一番驚いたのは、隣の友人。まさかの濡れ衣。青天の霹靂とは、まさにこのこと。空いた口がふさがらないとは、まさにこの瞬間の友人のこの顔。
「調子こいてた罰や、ざまあ見ろ」と心の中で思ったのもつかの間。次の疑問が湧いてきました。
仮に本当に友人がこぼしていたとしても、目の前でカッフィーがこぼれたのを見たのだから、こぼれた状態を放置するのはおかしくないですか?というか、だいたい、おしぼりも手渡しせずに投げたからね。と日本人CAに訴えました。
それを聞いた日本人CAは冷静さを取り戻したのか、「やっぱり彼女を連れてきます」と言って再びバックヤードへ。
今度はすぐに新人CAを連れて戻ってきましたが、明らかに不服そうな態度で戻ってきた新人CA。私たちの席の横に来ると、新人CAは腕を組み、「何?何か文句あんの?」とでも言いたそうな逆切れ状態。
一般的なCAとしてはあるまじき、その態度を見た日本人CAが、強い口調でそのことを指摘します、たぶん(←英語が分からないので雰囲気から想像)。
それに応戦する新人CA。「だから私は悪くない! 隣のYOUがこぼしたって言ってるじゃない!」と、たぶん(←英語が分からないので雰囲気から想像)。
機内の通路で、前代未聞、2人のCAの言い争いが始まってしまいました。
日本人CA「放置しているのはおかしいでしょ!」
新人CA「私は悪くないし!」
日本人CA「いいから謝れ!」
新人CA「いやだ、謝らない!」
(↑英語が分からないので雰囲気から想像)。
おぉぉ~、すげぇ~、迫力ある~等と思いながら、2人の言い争いを他人事のように眺めていましたが、ここで友人が割って入って、自分の無罪を主張し始めました。
「自分がカッフィーを取った瞬間に、重さのバランスが崩れて、トレーが傾いてこぼれたんです。自分はカップを左手で取ったので、もう一つのカップには当たりようがないんです」みたいな。
それを聞いた日本人CAは、冷静さを取り戻し、そして丁寧に友人の無実の訴えを新人CAに伝えました。
すると、新人CAは「ちっ、バレたか」(←英語が分からないので雰囲気から想像)とでも言いたそうな表情をして目を反らし、黙りました。
数秒後、再び、日本人CAの方を振り向くと、新人CAは意を決したかのように、早口で、こうまくしたてました。
「ホニャララ、ホニャララ、ホニャラララーッ!!!」(←英語だから理解不能)
まくしたてた後、新人CAは、独りで、そそくさとバックヤードに戻って行ってしまいました。その場に残された日本人CAは、彼女がまくしたてた“最後の言葉”に大きな衝撃を受けたのか、絶句し、うな垂れたまま。
「え!?何、何? すみません、今、何て言ったんですか?」と思わず日本人CAに問いかける私と友人。
ゆっくりと顔をあげ、私の方に視線を移すと、さらに紅潮し、今にも泣き出しそうな表情で、「言ってもいいですか?」と尋ねられました。
私は「もちろん」と返事。すると、日本人CAは、とっても、とっても恥ずかしそうに、こう言いました。
「『何で私が、男のチ○コを拭かなきゃいけないの!』だそうです」
チーーーーーン、、、。まさしく“チーーーーーン”です。
衝撃の結末過ぎて、私と友人と、そして日本人CAは、その場で沈黙。
ここで、ようやく私も本当に言いたかったことを言えました。「とりあえず、この状態(びしょ濡れ)、何とかしてもらっても良いですか?」
日本人CAは、ハッと我に返り、深々と頭を下げながら「大変申し訳ございませんでした。代わりの着替えをお持ちします。座席も別の座席をご用意いたします。帰国されましたらクリーニング代もご請求下さい」と静かに謝罪しました。
その後、日本人CAは、バックヤードから機内販売用らしきスウェット上下を持ってきてくれて、空いている席に移動させてもらい、帰国後クリーニング代の請求先も教えてくれました。
いま思えば、新人CAは、おそらく初フライトで、そこで犯してしまったミスにパニックになって、どうして良いか分からず、いや股間を拭いてやらないと行けないのは分かっているけど、それは絶対にいや、と思い、とっさに嘘を付いてしまったのではないかと。
フライトを終え、飛行機から降りるとき、CAたちたちが乗客を見送るセレモニーの中、新人CAはその後ろにちょこんと隠れて下を向いたまま。こっぴどく怒られたのか、ずいぶんと憔悴しきっていました。
飛行機を降りた後、友人は「外国人って迫力あるね」なんて呑気なこと言ってましたが、というか、だいたい、その原因を作ったのは、お前だろ!何度も何度も呼び出されたら、そりゃ疲れるだろ。お前がいちばん悪い。お前がオレに謝れ、と大人になった今では本当そう思います。
カッフィーを股にかけられた私は、現在は地元福岡に戻り、ひっそりと暮らしているのに対して、調子こいた友人はその後、スポーツ雑誌の編集者となり、今や、「世界」を股にかけて活躍しています。(おわり)